今日はいわゆるバレンタインデーというやつ
女の子が思いを寄せる人へ愛の贈り物をする日・・・



でも・・・でもねっ!!



そんなのチョコレート会社のチョコ売り上げのための陰謀であって
外国では男の子が女の子にプレゼントをくれる日であって
別に私が用意しなくてもいいんじゃないの!?・・・なぁんて



やっぱ、彼氏持ちの女の子が言うセリフじゃないよ・・・ね?












Sweet*sweeT













「おはよー、はい!ハッピーバレンタイン☆★」




教室に入って席についた瞬間に、親友のが私に箱を差し出す
それを受け取って『ありがとー!』と言うと
私も鞄の中から可愛くラッピングされた箱を取り出して彼女に渡す





「はい、私からもだよ♪」

「え!ってば今年、友チョコ作ったの?!」

「え、うん・・・まぁ、いつもの仲良しグループの分だけだけどね」

「今年は彼氏のためだけに作るのかと思った・・・」






だから別に期待してなかったのに


そう言って、はそれでも嬉しそうに笑った
それからお互いの恋の事情などなど他愛ない話をしていたら
授業の始まりのチャイムが鳴ったので、は自分の席に戻っていった



いつも部活の朝練が終われば私の教室に来るはずなのに
今日に限って現れなかった彼氏を少しだけ疑問に思いながら
私は教科書とノートを机に広げて授業に耳を傾けた







その日はどの休み時間も、挙句には昼休みでさえも彼に会えなくて
あの俺様な人がチョコをせびりに来ない事が不思議で仕方なかった








、跡部くんには渡した??」

「いや、渡すも何も・・・今日出会ってナイんだけど」







今日1日会わない日なんてめずらしい・・・
いつもは嫌でもこっちのキモチを無視してベタベタしに来るクセに


まぁ、いいや・・・いくら何でも部活に行けば会えるでしょ












「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」











まぁ、氷帝ホスト部って呼ばれてるくらい上玉揃いの我が氷帝テニス部だもんね
確かにみんなカッコいいと思うよ、うん




マネージャー業のためにコートに向かった私たちは絶句した




いつも以上に黄色い声援の飛び交うレギュラー陣用のコート
公式戦とかで『氷帝の応援スゴーイ!』って言ってる人たちの度肝を
これでもかッ!!ってくらい抜けそうな




女!女!!女!!!




そしてその中で不適に笑いながらチョコを受けとってるMyダーリン
いや、彼女の私を放って何してるんですか?








「お、何ややん」

「忍足くん・・・何、この女生徒あーんどチョコの山は」

「何や今年は他校も混じっとるらしいから、さすがにスゴイ量やわ」

「・・・まぁ、どうでもいいや・・・ハイ、マネからのチョコ」







紙袋から一つチョコを取り出して、忍足くんの抱えるチョコの山の上に置くと
私たちはみんなに配るために彼の元を後にした








!」







後ろから名前を呼ばれて、私は立ち止まる
振り返ると大量のチョコの入った紙袋を樺地くんに持たせた景吾がいた



残りの部員分のチョコ配りをにお願いして
とりあえず私は景吾の方に向き直る






「・・・何?」

「何じゃねェよ、今日が何の日か知ってンのかよ?」

「知ってるよ?だから部員みんなにチョコ配ってるんじゃん・・・あ、コレ景吾の分ね」

「あーん?俺が言いてぇのはそうじゃなくって・・・」





はぁ、と小さく息を吐いて景吾が続ける






「彼氏である俺様に、マネとしてじゃなく彼女としてのチョコはねぇのかって」






いつもの強気はどこへやら・・・



景吾は自分から催促するのが恥ずかしかったのか
頬をいつもよりほんの少しだけ赤く染めてつぶやいた




いつもは俺様な景吾が、私だけに見せてくれるそんな表情は
とっても可愛くって、今すぐにでも愛のこもった彼へのチョコを渡したかったけど・・・






「チョコはにあげちゃったし、景吾は他の女の子から貰ってたじゃん」

「あぁ!?ダチにくれてやる愛はあっても俺様へのはナイってのか?」

との方が付き合い長いんですけど・・・」






それにさ、普通は他の女の子からの愛のこもったモノなんて断るもんじゃない?
つーんと景吾から顔を逸らして、私は腕を組む



私のそんな態度を気に食わないのか、景吾は小さく舌打ちをする






「・・・っち、樺地!!」

「・・・ウス」





すると、樺地くんは持っていた紙袋を私の目の前に差し出した







「・・・・・・・・・え?」

「んだよ、いらねぇのか?」

「え?いや・・・いるもいらないも、コレって景吾がもらったチョコでしょ?」

「そう、俺様が『のために』もらったモンだ」







そう言って、景吾は私の手を取ると
王子様がそうするように、手の甲にキスを落とした






「・・・わ、私のため・・・?」

「あーん?お前、前に甘いモン好きだっつってただろ?」






確かに・・・けっこぉ前に言ったかも・・・
でも、あの跡部 景吾がそんな些細な事を覚えててくれたなんて



何だ、と言うことは、いつもは嫌がるチョコを全部受け取ってたのは
全部全部・・・私のため・・・??



いつもの景吾のただの気まぐれかもしれないけど
そんな彼の優しさが嬉しくて、私は思いっきり景吾に抱きついた






「樺地・・・後ろ向いてろ」

「・・・ウス」





それから、景吾の頬に軽くキスしした私に彼が言う








「紙袋の中全部とお前のたった1つを取引しようぜ」







そう言った彼は、今度は手じゃなく口唇にキスをくれた






バレンタインなんてチョコレート会社のただの陰謀
そう思っていた私だけど・・・



愛する人を前にすれば、ただの普通な女の子だったようです・・・


























END