“女の子は恋をするとキレイになる”


高校生にもなってそんなジンクスを信じてる私はバカかもしれないけど
もっともっとアナタに私を見てほしいから・・・
神様・・・どうか彼の瞳にだけでいいから私を可愛く映してください









メイクの魔法










「紅印ちゃんって超キレイ。ムカつくくらいキレイ」

「コラ、そんな言葉遣いしないの!」

「だって本当のことだもん・・・キレイすぎてイヤ」

「ふふっ、ありがとvでもだって可愛らしいわよ?」



幼馴染の中宮 紅印ちゃん
まぁ、いわゆるオカマさんってヤツなんだけど
私には優しいお姉さんであって頼れるお兄さんな人


彼(彼女?)は憎たらしいほどオシャレで
女の私なんかよりメイクのこととかファッションにうるさい



でも・・・他の人に紅印ちゃんがどう映るのかはわからないけど
とても優しくてとても強い紅印ちゃんのことを
小さい頃からずっと一緒の私は誰よりそのことを知っていて
そんな私が彼に恋をしないワケがなく、彼に密かな恋心を抱いている





「可愛いじゃイヤ!私も紅印ちゃんみたいにキレーになりたぁい!」

「アタシはアンタになりたいわよ」

「えっ!?何で!?どうして!?」

「だってちゃんとした女の子なら剣ちゃんももっとちゃんと見てくれるかもしれないでしょ?」




鳥居 剣菱・・・私のライバル
向こうは紅印ちゃんを何とも思ってないんだろうけど
私にとっちゃ敵以外の何者でもないわ!
小さい頃から一緒だった私を差し置いて紅印ちゃんの心を掴むなんてっ!




「・・・ねぇ、紅印ちゃん・・・」

「なぁに?」

「私にもメイクの仕方教えて」

「あら、珍しいのね。今まで興味のカケラも持たなかったのに」




クスクスと笑って、紅印ちゃんは私の頭をポンポンと優しく撫でた
それから、今まで自分の座っていた椅子に私を座らせて
彼は一方的に、メイクやヘアセットを私にしていった


私はやり方を教えて、っていう意味で言ったのに・・・



でも、紅印ちゃんに肌を触られるのはとても気持ちよくて
私は彼の為すままに、ただ大人しく椅子に座っているだけだった




「はい、出来たわよ」




しばらくして紅印ちゃんはそう言うと、私に目を開けるように促した
差し出された手鏡を見て、私は不満気に彼を見る




「何か気に入らなかった?」

「・・・このメイク・・・子供っぽい気がするんだけど?」

「そりゃそうよ!の童顔な顔に似合うようにメイクしたもの」

「やぁだー!私は紅印ちゃんみたいになりたいの!!」




興奮したせいで少し潤んだ瞳で彼を見つめれば
呆れた、という表情で頬に手を当ててため息を吐いた




「アンタとアタシじゃ顔の種類も性別も違うの」

「・・・そりゃそうだけど・・・」

「それにね、は可愛いんだからその路線に行かなきゃ勿体無いわ」

「・・・可愛いよりキレイがいいんだもん」




ぷぅっと頬を膨らませて紅印ちゃんを仰ぎ見ると
彼は困ったようにクスッと笑って、私の髪を撫でた




そして、私の口唇に手を添えて、いつもは高い目線を私に合わせた






「ねぇ、・・・気づいてるかしら?」

「・・・え、な・・・何を??」





大好きな紅印ちゃんの整った顔がすぐ近くにあるってだけで
私の心臓は激しく鼓動を打っていた


ドキドキが紅印ちゃんにわかりませんように
赤くなってる頬に気付かれませんように


まるで恋人がするかのように額をくっつけてきた紅印ちゃんが恥ずかしくて
顔を伏せようと思ったけど、それは彼の手によって遮られてて・・・





「その口紅、アタシは使わない色なのよ」




囁くように言われて、私の心臓は今にも止まりそう





「つ・・・使わないの?」

「そうよ。でもそんなモノをなんで持ってるかわかる?」

「え・・・気が向いた時に使うかもしれないから?」

「ふふっ、アンタって鈍感すぎるわ」




そう言うと、紅印ちゃんの言葉に反論しようとした口を塞がれて
私は彼に言おうとしていた言葉を飲み込んだ



・・・・・・え?
私、今・・・紅印ちゃんとキス・・・してる?



紅印ちゃんのキレイな顔がドアップになってて
私の口を塞いでいるのは紅印ちゃんのそれだと気付いた





「・・・・・んなっ・・・・・!?」

「これでわかったかしら?」

「え・・・あの・・・く、紅印ちゃん・・・?」

「アタシが使わないのにこの口紅を持ってるのはアンタにあげたかったからよ」





小さい頃からアンタのことずっと好きだったんだからv
いつものように不適に笑って、紅印ちゃんはそう言った


似合わない口紅を持ち歩いてるのは、私に使わせるため・・・?


紅印ちゃんからの予想もしてなかった愛の告白に
私の瞳からは大粒の涙がこぼれてきて
せっかく入れてもらったアイラインとかが混ざり落ちてきた




「・・・泣かないの、涙が真っ黒よ?」

「だって・・・嬉しいんだもん、紅印ちゃんの告白・・・」

「そう?ならもっと早くに言ってあげても良かったわね」



私の涙をティッシュで拭き取りながら
紅印ちゃんは私の口元を見て、再び口を開いた




「あら、・・・アンタその口紅、予想以上に似合うわね」

「本当!?」

「えぇ、思わずキスしたくなるわ」




そう言って、紅印ちゃんは私の口唇に優しいキスを落とした




紅印ちゃんが私は可愛いままがいいって言うから、背伸びをするのは止めにする
でも・・・アナタがくれたこの口紅だけは毎日付けさせてね



・・・だって、アナタからの優しいキスが欲しいから















END